第8章 本音
side灰羽。
次の日会社に行けば隣のデスクで資料の整理をする椎名さん。
こちらから挨拶すれば俺の方を見てにこり、挨拶をする。
業務の際もいつものように仕事の話。
仕事に集中すればなんとか気持ちを保っていられる。
椎名さんを上司だと思っていられる。
そう思った午前。
お昼のチャイムが鳴り、オフィスに座る人が次々に外へと流れていく。
「すいませんっ!」
俺は食事に行こうとする大きな背中に声をかけた。
「黒尾さんっ!」
名前を呼べば振り返り、アシンメトリーの髪から鋭い瞳が覗く。
「なんだ?リエーフ。」
「あの、さっき家族から連絡がありまして…
家族が事故で病院に緊急搬送されたって…」
そう、”嘘”をつけば黒尾さんは早退ということで処理してくれるとのことだった。
「ありがとうございます…」
お礼を言うと俺は帰宅準備をし外へ出る。
駅まで向かう道。
それを途中で曲がり、人通りの少ない道を歩く。
ひたすら進めば見えてくる路上駐車している1台の車。
運転席の窓をコンコンとノックすれば、がちゃりと内側から開く鍵。
助手席側に回り中へ乗り込めば、発進する車。
「で、どこにいくんですか。
椎名さん。」
そう。
車の主は椎名さん。
昨日の夜に来たメッセージアプリでメッセージが来た。
”会いたい”
”話がしたい”
って。