第6章 ご対面。
side灰羽
ふ、と我に帰れば、いつのまにか菅原さんはいなかった。
先に帰ったみたいだ。
俺も帰らなきゃ。
そう思うけれど、体の震えが止まらなくてなかなか部屋から出ることができない。
なんとか部屋から出て会計をお願いしたが、料金は支払い済。
菅原さんが全て支払って帰ったらしい。
ありがたい、とか、お礼しなきゃ、とか、せめて半額は返さないと、とかいろいろなことが頭の中をめぐる。
でも、会いたくない。
柔和な笑顔を浮かべていた菅原さんが思い出せない。
覚えているのは最後に俺に笑いかけた時の顔。
冷めた瞳と
笑みを浮かべる口元。
そして笑顔で言い放った”言葉”
それらを思い出すだけで背筋が凍りそうだ。
俺は恐怖に支配された体を、引きずるようにして帰路に着いた。