第4章 2人きりでのイケナイ遊戯
ホームに降り、新幹線の改札を抜ける。
エレベーターの前で私は灰羽くんを呼び止めた。
振り返る彼のパーカーの襟元をぐっと下へ引っ張ると、空いた手を首に回し、灰羽くんの唇を奪った。
びっくりする灰羽くん。
そんなの御構い無しに舌を絡ませ濃厚なキス。
周りの視線なんて知らない。
絡めた舌を、重なった唇を離す。
そして、私は灰羽くんに背中を見せた。
「恋人ごっこはもうおしまい。」
「さよならよ。」
そのまま私はまっすぐ歩き出す。
顔を見てしまったらきっと離れたく無くなってしまうから。
「嫌だ!」
声が降ってきた。
後ろから抱きしめられた。
せっかく決心したの。
貴方から離れる決心を。
「わがまま言わないで。」
抱きしめられた腕を外そうとするが、離れない。
「いやだ!」
私だって嫌よ。
でも、私が貴方をすきだって、貴方が自覚してしまった。
私は、きっと帰れなくなる。
自分が帰らなければいけない場所に。
「離しなさい、”灰羽くん”」
まるで仕事のような口調で灰羽くんを突っぱねると灰羽くんの腕が緩む。
ひやり、と頬に冷たい雫。
彼のものか自分のものかもわからない雫。
緩む腕をすり抜け、私は歩いた。
もう彼は追ってこない。
彼から見えなくなるまで必死に前に進んだ。
そのまま途中トイレに寄ると、私は隠れて泣いた。
溢れ出す涙が止まらなかった。
彼を好きなのはいけないこと。
そう思うだけで涙が溢れて止まらなかった。
好きだと自覚しなければよかった。
こんな関係に、ならなければよかった。