第2章 罪悪感
明るかった陽が橙に変わる頃、私達はまだベッドの中にいた。
行為は終えていたが離れがたくてずっとベッドで抱き合っていた。
遠くから子供の帰宅を知らせる放送が聞こえてくる。
「帰らなきゃ…」
そう、体を起こすと後ろから灰羽くんが私を抱きしめる。
「行かないでください…」
子供が駄々をこねるような声音で私に縋る灰羽くん。
その手をそっと解くと私はベッドの縁に座り、床に散った 服を集める。
「旦那が帰ってくる前に家でシャワー浴びたいから…」
下着に足を通し立ち上がる。
「行かないで…」
縋るように私の腰に腕を巻きつけ、灰羽くんは私の腰に口付けた。
ぞくり
今までの快感の名残で体に電流が走ったように震える。
「もう…だめ。」
服を身につけ乱れた髪の毛を整えると、私は鞄を持ち玄関に向かう。
パンプスを履き、玄関のノブを回そうとした時、また、後ろから抱きしめられる。
「また、抱かせてくれますか?」
耳に吐息がかかり、肌を泡立たせたがそれには気づかないふりをして灰羽くんの手を解く。
「灰羽くんの”待て”が上手にできたらね。」
寂しそうな顔。
そんな顔しないで。
時間なんて気にしないで抱きしめてあげたくなるから。
「だったら、俺が上手に待てるように…」
キスしてください。
そう、彼は言った。
ずるい。
これじゃあキスしないわけには行かないじゃない。
「おねだり上手ね。じゃあしゃがんで?」
触れるだけで終わらせるつもりだった。
頬に手を添え、形の良い唇にそっと自分の唇を重ねた。
すぐに離れようとするとそれよりも早く灰羽くんの手が私の後頭部を捕まえ唇の隙間から舌を差し入れてきた。
深く深く絡まり貪り合う。
散々口内を犯した灰羽くんの舌は満足したかのように唇を離した。
「これで次を待てます。」
「ちゃんと良い子で待ってるのよ。」
砕けそうな腰をなんとか立たせ、私は灰羽くんの部屋から出た。
車に戻りシートに座ると興奮と罪悪感を感じながら、自分の身体を搔き抱いた。