第14章 単身赴任、残る。
「仕事…続けたい。
だから…」
孝支1人で、転勤先に行って欲しい。
そう伝えようとした。
でも、その言葉は、私の口から発せられることがなかった。
にこり、と笑みを貼り付けた孝支が
私を見ていた。
「なあ文乃?
それ、嘘だべ?
仕事続けたいなんて、嘘なんだべ?」
さああと血の気が引いた。
「ち、違」
「違わない。じゃあ俺が1人で仙台に行ったら文乃どうする?」
ぎぎ、
孝支が立ち上がり私の背中側に回る。
「また灰羽のところに行くんべ?」
図星だった。
仕事も続けたい。
でも、灰羽くんと離れたくないのもまた事実。
するりと首に腕が回る。
「前さ、灰羽と飲んだ時に言ったんだ。
文乃が俺以外を選んだら…
俺、そいつのこと、ころしちゃいそうだって。」
ふわり、耳に入って来た言葉に
私は背筋を凍らせた。