第12章 静かな波が、跳ねる。
「俺、転勤になった。」
孝支の口から出たのは意外な話。
それは思ってもいなかったこと。
「え…?孝支、転勤はしないって言ってたんじゃないの?」
私の仕事もあるから入社をする時から転勤はなし、と会社にも伝えていたはず。
それなのにどうして…
「前々から話は来てたんだよ。
…文乃が楽しそうに仕事してるのを見て、断ってたんだ。
でも、流石にそろそろ断れなくなってて…」
申し訳なさそうな顔。
そうか…
孝支にもたくさん悩ませていたのか…
「場所は?」
「仙台支社…」
そっか…
地元だから余計に断れないのか…
「いつから…?」
「新年度…だから4月からになるな。」
「孝支は…どうしてほしい……?」
そう、私が問えば、孝支はぽつり、答える。
「俺は…ついて来てほしい。
でも、それは俺が決めることじゃあないべ?」
わかってる。
でも、すぐには決められない。
「…年末年始の間に、答えを出す…から…」
時間を欲しい。
そう言って私は、席を立った。