第1章 最愛の
とある会場、
「まぁぁぁぁぁぁぁきぃぃぃぃぃぃ!!」
聞き慣れた声が、右側から見慣れた姿で全力疾走でやってくる。げっ!っとたじろく巻島。
「まきちゃん!」
「くはっ」
不意打ちの左側から名が東堂より先に巻島に抱きつく。愛しい彼女を抱きしめ返すと後ろから
「巻ちゃん!そいつはダメだ!」
なんて言ってくる東堂。
「うるさいカチューシャ!」
「なにぃ!」
愛しい彼女は東堂との初対面で「なんでカチューシャ?」と言い放ち、以来、会えばこの調子である。
「荒北と同じ事を言うな!」
「誰だし荒北!」
べーっと言い返す名。荒北と同じなのかとしみじみ名を見てしまう巻島。
「だいたい毎日、毎日、巻ちゃんに電話だなんて迷惑なんですよ先輩!」
巻島に抱きついたままの名
「む!いつ俺が巻ちゃんに迷惑をかけた!」
「かけてますー。おかけで私が電話しても繋がらないんだから!」
あぁ、確かに東堂との電話を切ると名から電話があったことを知り、夜遅くに悪いとなかなか返せてはない。
「それにしても人前でイチャイチャと!巻島裕介の彼女ならば場を弁えるべきだろう!」
「余計なお世話ですー!!」
「巻ちゃん!そんな女ひっぺかせ!」
わなわなと名を指さす東堂に
「いやいや、人の彼女に何言うんっショ」
と呆れる巻島。
「そーだそーだ。」と脇で言う名の頭を撫でながら、そうは言っても初めて名と東堂を会わせた時の晩、電話越しで
「良い子ではないか!元気が有り余ってる感じで何処でも着いてきそうだな!」
なんて、それからも話に出せば誉めてくれているのを知っている。
「巻ちゃんと競える人なんているんだね!凄い人だね!」
なんて名も言っていたのを覚えている。だから自分を挟む二人を見て
「なんでお前らはそう意地っ張りなんショ」
と言えば、どちらも巻島の方を向き
「「意地じゃない!!」」
「はもるなっしょ」
と笑えてしまった。
愛しい彼女とベストライバルが仲良くなってくれて有り難い事この上ないなと3人揃うといつも思うのである。