第6章 囚われの謌【光秀】甘切ルート
「ああ…っ、、信長…さま…っ…」
まだ日が高い昼間。その時刻には不似合いな艶やかな美蘭の声が天主に響いていた。
攫われていた美蘭を連れ帰ったのは空が白み始めた夜明け。
湯浴みさせた美蘭は、心身ともに安心し緊張が解けたのか、泥のように眠った。
そして昼過ぎに目覚めた美蘭は、
様子を見に来た信長に、今すぐ抱いて欲しいと懇願したのだ。
「…っ…よく…締めつけて来るな…貴様のナカは。…どうだ…良いか…っ…?」
グチュグチュといやらしい音を立てて、抜き差しされる信長の猛り。
腰を振りながら、恍惚とした表情の信長が聞くと、
「ああっ…あ…っん…っ!…も…っ…と…っ!」
自分も腰を振りながら、美蘭は答えた。
「…ふ…っ。欲張りな女だ…っ。」
ニヤリと笑った信長は、そう言うと、更に激しく腰を振った。
「あああ…っ…。信長さま…っ…気持ち…いいっ…。」
美蘭は、怖かったのだ。
こんなにも愛している人がいると言うのに、
光秀のあの揺れる瞳に
光秀の熱い口付けに
全てを飲み込まれそうになった自分自身が。
光秀のことなど…他のことなど何も考えられなくなるほどに信長に激しく抱いてほしいと、何度も何度も懇願して、繰り返し揺すられ続けた。
「………。」
そうして熱い熱が交わされている天主入り口の襖の外側の廊下には、立膝をした光秀がいた。
(今直ぐに来いとは…こういうことか。)
光秀は、
信長は全てわかっているのだと思った。
光秀の美蘭への想いも、
あの小屋で光秀が何かしたらしいことも。
だから
美蘭は自分のものであると、
主張し思い知らせるために、
わざと伽の生々しい音を、自分に抱かれて可愛らしく啼く美蘭の声を光秀に聞かせるために呼びつけたのだろう。
光秀は、鼻で笑った。
(もう手遅れだがな。)
すでに
恋に落ちているのだ。
ずっと前から、
心は囚われているのだ。
それは、恋する相手が誰のものであろうと
止まるモノではないのだ。
…そう強がりながら、
光秀は、
信長が出させている美蘭の甘い声に胸が締め付けられた。
甘切ルート 完