第6章 囚われの謌【光秀】甘切ルート
腕に抱いた美蘭の身体は冷たかった。
(だが震えているうちは、まだ大丈夫だ。)
身体の冷えが進み過ぎると、震えすら止まり反応も無くなる。
光秀は、
戦さ場で、幾度となくそうした様を見てきた。
向き合うように抱いていた美蘭を、前を向かせ後ろから抱えるように抱き直した。
そして、自分の足袋を脱ぎ、美蘭の足袋を脱がせ、先ずは膝を抱えて座る美蘭の裸足の足に、自分の裸足の足で肌を合わせた。
更に、両方の手のひらをそれぞれ自分の手のひらで包み込んだ。
「おまえからも足を俺の足に絡めろ。」
「…っ…!」
背中に光秀の体温を感じ、まるで後ろから抱き締められている様な状態で…いや、拘束されているとも言える様な状態で、耳元で聞こえた低音に、美蘭の身体はふるりと震えた。
足を、自分で絡めて来い…というのだが、
今の状態でも十分過ぎるほど恥ずかしいというのに、と、美蘭は戸惑った。
「しっかり体温を戻しておかないと…いざという時走れもしないぞ。生きて信長様に会いたければ、今できることをやるのが賢いと思うがな。」
「…っ。」
信長様の名前を出した途端、美蘭の身体は反応した。
そして、
美蘭は覚悟を決めたように、しずしずと、自分の足を光秀の足に絡めた。
ひんやりとした足が重ねられたというのに、光秀の胸は、ドクリと熱く騒めいた。
だが
信長のためにそうしてきたのだと思うと、
この女は他人のモノなのだ…という現実を思い知らされ
胸がギュッと締め付けられた。
両手両足を拘束しているような状態に胸が騒いだが、邪な感情を押し殺し、美蘭の身体を温めてやることに集中する光秀。
冷たい手のひらを、包んでいる自分の手のひらで何度も擦ってやると、摩擦で少しづつ温まってきた。
それならば…と、
絡ませている素足も動かし、足も擦ってやる。
暫くすると、足も温まって来た美蘭。
(これくらい温まれば大丈夫だろう。)
震えも止まってきたようだ。
だが、
せっかく抱き締めているのを手放すのが惜しい気持ちになった光秀は、
何も言わず、美蘭の手足を己のそれで擦り続けた。