第3章 -おねだりデート-(及川徹)
「じゃあ、今日は自分で脱いで?」
初めて来たわたしの部屋で、
及川さんはゆっくりわたしにキスをして、
とんでもないことばを放った。
「え⁈」
「すみれが自分で脱ぐトコ見たいな。」
「…っ⁈」
"キャンディがほしいな♡"って、子どもがおねだりするような無邪気な瞳でわたしを見つめている及川さんを、わたしは"嘘でしょ⁈"という気持ちを込めて見つめ返した。
「だってー‼︎付き合う前のすっぽかした"残りのデート"するって言ったのすみれちゃんだよー?」
こんなときに"すみれちゃん"て言うの…ズルい。
"及川さんがしたいデートをしてください"って言ったのに、そのデートの日に突然告白され、わたしが逃げ出してしまったのだけど、先日、ふとあの時ドコに行くつもりだったのか聞いてしまったのが、そもそもの間違いだった。
今日はそのデートのやり直し。及川さんは、わたしにスーツを選んでもらいたかったみたいで、一緒にスーツを見に行き、買い物を楽しんだ。
そして、デートの後、今日はわたしの家に行きたいと言われ、初めてウチに来てもらった。"おねだりしちゃった♡"と、少し恥ずかしそうに言う及川さんに思わずキュンとしてしまったのもつかの間…今のやりとりに至る。
「ね?いーじゃない?」
わたしを抱き締めていた手をはなし、及川さんはストンとわたしのベッドに座って、"拒否権はないよ♡"と言うかのようにニーッコリ微笑んでいた。
「そ…そんなトコ見て何が楽しいんですか⁈」
「えー?それはー!お尻がどうなってるのかなーとかさ♡服脱ぐ時に見えてくるおっぱいとかさ♡身体のラインとかさ♡」
「ヘンタイッ‼︎」
「"及川さんのしたいデート"していいんでしょ?及川さんは、すみれが自分で脱いでくれるデートがしたいなぁ。」
「な…なんか違うっ‼︎」
「違くないよーだ。」
恥ずかしくて真っ赤になってしまっているコト、及川さんは気付いているはずなのに、及川さんは何も言ってくれない。
そのままお互いに動かず、睨めっこ状態が続く…。
根負けしたのは…