第3章 坂田銀時:結婚記念日(甘裏)完結
ふと目が覚めた
外はまだ暗く、あれからまだそんなに寝ていないのだろう
もう一度眠る前に、何気なくのほうを見る
ゴソゴソと布団を頭まで被り蠢くのが見え、もしかして彼女も起きてしまったのかと思い小さめの声で呼んでみた
「…」
「っっ!」
なんだか様子がおかしい
起きてはいるようだ
彼女の布団へ近づき、掛け布団を軽く持ち上げてみる
「……やっ」
「…泣いてんのか」
まさかの状態に驚きが隠せなかった
なんでだ
俺には皆目検討もつかない
ただ、俺にできることといえば
優しく包み込んでやることぐらい
「?どした」
「っく、」
後ろから抱きしめてやることしか出来ない
声を押し殺している様子に俺の胸まで苦しくなってくる
「怖い夢でも見たか」
少しおどけて話しかけてみる
すると彼女はフルフルと首を振り反応した
「…夢を見てたのは銀時でしょ」
「俺?」
「ユキって誰」
「ユキ…?」
「…吉原の人?」
「は?」
「私、ほんとは、知ってたの」
大きく息を吸いゆっくりと吐きだし、呼吸を整えは続けて言った
「何度も、見てた。吉原を出入りしてるとこ。実は一度あとをつけたこともあったの」
クルッとこちらに向き直る
泣き止んではいたが、目は真っ赤だ
「銀時、抱き合ってたね」
そう言った彼女は苦笑いしてこう付け加えた
「ごめんね、勝手にあとつけちゃって」
なんでだよ、なんでそこで笑って謝ってんだよ
やっぱりこいつは全然自分本位なんかじゃなかった