第1章 坂田銀時:俺だけを(ギャグ甘裏)完結
今日も負けた
「はああ〜…」
もう!また負けちまったよコンチキショー!
なんなんだよ、あの台は!
出るようで出ねぇ
なんなんだよ、ったく
焦らすだけ焦らしやがって!
もうちょいでイケッかなぁ〜?なんて期待持たせやがって全然じゃねえかよ
くそっ!
「だああ〜!!!騙された〜!!!」
「誰に騙されたんですか?」
「へ?」
騙されたと誰に言うでもなく空に向かい叫び項垂れていたところへ突然声をかけられた
落ち込みすぎてどこを歩くでもなくフラフラと彷徨い、気が付けば度々訪れる団子屋の前だった
「銀さん、大丈夫ですか?顔色…すごい悪いですよ」
彼女はほうきを握りしめ眉尻を下げたまま覗き込むように俺を見つめ心配している
あ〜可愛いなぁ、今日も可愛いなぁ
俺のこと心配してるってとこがこれまた可愛いなぁ
「そりゃあ悪くもなるって、もう俺あれだ、きっと死ぬんだわ。弄ばれた結果死ぬんだわ。最後に会えてよかったよ今までありがとう」
焦点の合わない遠い目でそう答え、さっきよりさらに項垂れた頭と両手をだらーんと垂らしてそのまま歩いて通り過ぎた
もう駄目だ、家賃どころか食費もねえわ
終わった、俺の人生終わった
このまま家に戻ったら神楽に殺される、半殺しじゃなく殺される
戻らなくてもあいつの執念で探し当てられる
定春使って探しに来る、逃げられねえ
死んだな俺
「え?ちょっ…!?」
後ろからカランとほうきが倒れる音と慌てるような彼女の声、そして駆け寄る草履の音が聞こえたと同時に袖をクイッと引っ張られた
「…お話!聞きますからっ!だから少し待っててください!」
彼女は俺がボーッと答えずにいるのを見て、そのまま袖を引っ張り団子屋の店先にある長椅子へと座らせた
「…はい!銀さんの好きなお団子です。食べながらここで少し待っててくださいね!」
いつも俺が頼む好物を手早く用意し、何故か鼻息荒く意気込んだ様子の彼女は店の奥へと戻って行った
言われたとおり素直にモグモグと団子を食べ空を見上げていると、ものの数分で彼女は店先へと戻ってきた
「お待たせしました!さ、行きましょうか」
団子屋の前掛けを外して帰り支度を整えたであろう彼女がニッコリ笑う
ああ、やっぱ可愛いなぁ
なんて思いながら俺は促されるままに着いていった