第7章 〜小さな恋と、大きな愛 〜 (木兎 光太郎)
パパが
光太郎君の髪のセットにすっかり慣れて
学校のみんなも
髪型、そして何よりそれぞれの性格の違いで
双子のことを見間違わなくなった頃、
夏休みがやってきて、
長い休みの間に
双子とパパとママは
たくさんの思い出を作り、
そして迎えた新学期、2日目の朝。
『おーい光太郎、おいで!』
いつもように
パパが光太郎君の髪をセットしようと
洗面所から声をかけると、
ひょこっと顔を出した光太郎君。
…と、その後ろに、手を繋いだ賢太郎君。
?
『パパ、賢太郎も一緒にしてくれる?』
『いいけど?』
理由は聞かないまま
二人を並ばせてドライヤーをかけ、
シューっとスプレーで柔らかく固めて。
鏡の中で目を合わせながら
何か言いたげな二人。
知らんぷりで黙って手を動かすパパに、
やがて賢太郎君が、言いました。
『パパ、明日から、
僕も光太郎と同じ髪型にしてくれる?』
『かまわないけど…』
『あのさ、』
何か言いかけた光太郎君を止めるように
賢太郎君が口を開きました。
『光太郎、僕、自分で言うよ。
…パパ、あのね、綾ちゃん、
夏休みの間に転校しちゃったんだ。』
『そうか…』
かける言葉が見つからないパパ。
『だから、もう、別々じゃなくていい。
っていうか、光太郎とお揃いがいい。』
『オレも、賢太郎と一緒がいい。
だって鏡見なくても、賢太郎を見れば
オレがカッコいいのがわかるんだもん!』
ニカッと笑う光太郎君と、
それを見てニコッと笑う賢太郎君。
…小さな胸の傷も、
大きな味方がいれば、心配なさそうです。
『そっか。
それならパパも2倍張り切って
二人をカッコよく仕上げるぞっ。
…さ、出来上がり。
二人揃うとますますカッコいいなぁ!
さすが、パパとママの子だ。』
お互いの頭を触りながら、
顔を見合わせて笑う双子たち。
『さ、行っておいで!』
パパとママに見送られて、
2つのランドセル姿の背中は
今日も仲良く角を曲がっていきました。
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光太郎君のあのミミズクヘッドに
賢太郎君のほのかな初恋と、
見守る家族の愛が関わっていたことは、
この物語を読んで下さった方だけが知る
秘密のお話です。
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