第7章 〜小さな恋と、大きな愛 〜 (木兎 光太郎)
『隣のクラスに、
綾ちゃんっていう子がいてさ、
すんげぇ、声も背もでっかくて。』
『へぇ。光太郎より?』
『うん。背も声も、オレよりでかい。
そして、なんか、ちょっと、こわい。』
『こわい?』
『だって、男子にも文句言うんだよ!
"ちゃんと真っ直ぐ並んで!"とか
"男子、静かにしなさいよ!"とか。
センセーよりキビシイっつーか。』
『(笑)そりゃ、頼もしい子だな!で?』
『なのにこの間、その子が泣いちゃって。』
『そんな強い子、誰が泣かせた?
ん?まさか、光太郎じゃないだろーな?!』
『チガウ!俺、そんな勇気ないしっ!』
『泣かせるのに勇気がいるのか(笑)
で?綾ちゃんはなんで泣いた?』
『綾ちゃんに文句言われたことがある
男子が何人かで手を組んでさ、
昼休み、綾ちゃんのポケットに
ダンゴムシ入れたんだって。』
『ダンゴムシ?』
『綾ちゃん、固まっちゃって。』
『綾ちゃんは、虫、苦手なのかぁ。』
『みたい。じーっと固まっててさ、
俺がイタズラしたヤツをとっちめてる間に
賢太郎が助けてあげたんだよ。』
『ほぅ。二人とも、エライなぁ。』
『賢太郎がダンゴムシ全部とってあげて
"もう大丈夫。"って言ったらさ、
綾ちゃん、わーん、って泣き始めて。
みんな、びっくりした。
だって、いつも先生より怖いのに、
ダンゴムシで泣くなんてさぁ。』
『…でも、
それと光太郎の髪型、何か関係あるかな?
パパにはさっぱりわからないんだけど。』
光太郎君は、声をひそめて言いました。
『目の前で泣き出した綾ちゃん見て
俺は"ヤバッ、メンドッ"て思ったのに、
賢太郎は"ドキっ"としたんだって。
…ね、パパ、これって、恋だよね?!』
『(笑)』
賢太郎、ギャップ萌え、というヤツか?
そしてそれを"恋"だと思った光太郎…
二人らしいそれぞれの優しさと
二人らしい感性がちりばめられた話。
そんな息子たちのことが嬉しくて
パパはもう、ニコニコが止まりません。
『なのにさ、』
ニコニコしてたパパに向かって、
光太郎君は、なぜかプリプリ怒り顔。
『次の日の朝、』
光太郎君の話は、続きます。