第10章 それは甘く、強く
「俺…ちゃんがさ、
頭から離れないんだ…それくらい好き」
櫻井さんの息が耳にかかって、
胸がまたトクンって鳴った。
「ちゃんしかいないんだ。
俺、本当にちゃんしかいない
大切な人がいるのは分かってるんだ。
だけど…どうしても、諦められない……」
『櫻井さん……でも、私…』
そう言うとまた抱きしめた力が強まった。
どうしたんだろう…
「俺じゃ…だめ…かな?
俺じゃ、その人の代わりになんない?」
ん?その人…?さっきから…誰のことを…
『櫻井さん、あの…
さっきから言ってる"人"って誰ですか?』
そう聞くと、急に体が離れて、
櫻井さんの顔がようやく見えた。
「え、だっているんじゃないの?
大事な、大切な…存在の人」
『え?そんな人…あ、けんちゃん』
「だから、その…ん?……猫?」
そう。
櫻井さんの足をスリスリするのはけんちゃん
『はい。うちの…大切なペットです』
「……まさか……え、うそ。そういうこと?
うわ~……まじかぁ!」
なんて言ってる櫻井さん
ん?どういうことだったんだろう。
「じゃあ…返事は…?」