第21章 サクラ色の再会
あれから、映画の撮影は終盤を迎えて
寒い冬にまでなった。
『うぅ~……寒いっ!』
〈ちゃん、お客さんだけど〉
助監督さんが私のところに来てそう言う。
現場にお客さん?だれだろう……
『仁美…さん?』
そこには腕を組んで待ってる仁美さんがいた
なんで、この方が……ここに……?
「ごめんなさい!」
『え、ちょっ……急に』
ほんと急に仁美さんは頭を下げた。
「翔のこと……ごめんなさい!」
『…………大丈夫ですよ』
「…………もう忘れるから」
『……忘れるなんてしないでください。』
そう言うと彼女は意味不明とでもいうように
私の方を見ていた。
『あなたは翔くんの初恋の人だから、
翔くんが好きだった仁美さんでいてください』
「っ……っっ……うん」
『もう、大丈夫ですか?心も体も』
「っ……大丈夫……」
『ふふ、よかった』
仁美さんは最後に涙を拭いて、
「あなたってバカがつくほど良い人ね!
翔と……そっくりよ」
『それ、褒めてます?』
「それは、どうだか?ふふ」
なんて二人で笑いあって、
仁美さんはすぐに帰っていった。
『ありがとうございました。』
その小さく逞しい背中に、
小さく呟いて一礼した。