第17章 "ごめん"-翔side-
仁美は1回、自殺未遂をした。
あのときも
"もう死ぬね"って電話してきて、
俺はそんなこと信じずに仕事をしてて、
そしたら、本当に死のうとしてた。
線路に飛び出したらしいけど、
幸いギリギリのところで電車が止まった。
それからは、お母さんとパリに留学して
俺も何年ぶりかに今日、仁美に会った。
「翔?」
「ん?」
「行かないでくれて、ありがとうね?」
別に付き合ってたわけでもない。
好きだったのは確かだったけど、
知り合ったときから仁美には恋人がいて
いつも、違う男をつれ回してた。
「翔、本当に好きなの?
好きだったら、普通行くのに…」
「…………好きだよ」
好きなんだよ、ちゃん
今すぐにでも会いたいよ。会いたい
なのにさ、どうしても行けないんだ
どうしても、どうしても……
"ごめん"しか出てこない。
「翔?……泣いてる、の?」
「っっ……っ……っ…………クッ……」
ごめんね、 ちゃん