第4章 友という花の名は①
美蘭が戦国時代にやってきてから
そろそろひと月が経とうとしていた。
戦国時代や戦国武将の考え方には、まだまだ日々驚かされることばかりではあるが、
武将たちの世話役をしながら、
針子をしながら、
ようやく自分の居場所らしきものが、ささやかではあるが、見つけられたような…
そんな日々を、過ごしていた。
そんなある日。
「ゆ…結衣(ゆい)と…申します。よろしくお願いいたします。」
針子部屋に、新しい仲間が増えた。
その女の年は、美蘭と同じくらい。
肩につく黒髪が印象的な、素朴だが、可愛らしい顔立ちをしている、大人しそうな女であった。
年配の針子に囲まれていた美蘭は、結衣という同世代の女性との接点が増えたことに胸を躍らせ、歓迎した。
「それでは本日は、ここまでに致しましょう。」
「は〜い!」
「お疲れ様でした。」
結衣の初仕事となった、本日の仕事が終わった。
「…あの…美蘭様!」
「結衣さん、お疲れ様でした。刺繍がとっても上手なんですね!是非教えて欲しいです!」
「…そんなっ。わたしなんてまだまだです…。」
美蘭の素直な言葉に、顔を赤くしながら答える結衣。
その結衣が、おずおずと、言葉を続けた。
「あの…もしご迷惑でなかったら…安土城のことを教えていただけますか?」
「このお城のこと?」
「…はい。わたし…このお城にお支えしている主人の口利きで針子の仕事をさせていただけるようになったんです。今日は初日だから、待ち合わせて一緒に帰ろうと言われ約束したのですが…こんなに広いとは想像もしていなくて…。」
「うふふ。その気持ちわかる!」
「…え…?」
「わたしも最初の頃は迷子になってばっかりだったから!…あ…まだ…たまに迷うこともあるか…。そんなわたしで良かったら、いつでも案内するよ♡」
美蘭が笑顔でそう言うと、
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
結衣も、
ようやく力が抜けたように笑顔になった。