第29章 捕らわれた未来(2)
ふと、背中に自分と違うぬくもりを感じて私は目を開ける。
(……あれ、何で自分の部屋に)
夕焼けの赤い光が自分の部屋を映す。
記憶では、私は確かに針子部屋に居たはずなのに。
(???何か身体がふわふわ浮いてた記憶はあるけど……)
とりあえず私は布団から出ようと身体を動かす。すると腰にガッチリと何かが絡みついていて、起き上がる事が出来ず慌てて布団を捲ると……自分の腰元に見覚えのある腕が回されていた。
「………!」
首だけ動かし後ろを見ると、
家康の柔らかい髪が肩越しに見える。
(な、何で家康がここにっ??)
パニックを起こす私とは反対に、背中越しに規則正しい家康の寝息が聞こえる。私は起こさないように、ゆっくりと身体を動かし、家康と向き合う。
(……それにしても……寝顔。かわいい〜)
本人に直接言ったら怒られるような言葉を、心の中で呟く。滅多に見られない無防備な家康に興味津々。私は穴が空きそうなぐらいじっーと見つめる。
まつ毛長い〜。
肌綺麗〜。
髪ふわふわ〜。
長い睫毛、きめ細かい肌、猫っ毛の髪。
私は指で一つ一つ触れながら、心の中で叫ぶ。そして、うっすら開いた唇の前で手を止める。
(……そう言えばまだ私から)
キスした事ない。
(今なら………)
ドキドキ。
ドキドキ。
普段ならなかなか出来ない大胆な行動。でも家康が寝ている今ならできそうな気がして……私はそっと目の前の唇に自分の唇を近づける。