第28章 捕らわれた未来(1)
林道奥にある暗闇___
そこに二人の影。
「同盟の件は破談になったようです」
「使えん女だ……。折角、好いた男に輿入れする機会を与えてやったとゆうのに……」
「……その件ですが。代わりにかなり使える女を見つけました」
黒ずくめの男は、
今回の成り行きを報告する。
「ほぉ……信長が養女に迎え入れ、徳川の許婚とは……なかなか、使える女ではないか」
「近々、徳川は大きな戦に出ます。その時が狙いどきかと……」
その女を餌にして呼び寄せれば。
「上杉が信長を……今川の残党が徳川を……葬ってくれるかもしれんな」
怪しい笑みを浮かべた男の袈裟が、
ゆらゆらと風に靡く。
「まずは、そのひまりと言う女を……」
捕まえてからだな。
冷静で低い声は闇の中に消えた。