第166章 天邪鬼な君へ〜集大成〜
まだ時は夕刻前。
満開の桜が風で揺れる中、石碑の前で重なる二人を見て他の者は何とも言えない息を吐いた。
「もう、運命という二文字では足りないな。あの二人」
秀吉の言葉に安土組は頷く。
「……やっぱ、見せつけられたか」
解ってたとは言え、相変わらずの二人に幸村は思わず言葉を零し、佐助の肩に腕を置いた。
「……ちょっとした花見前の余興さ」
「だからってよ!あんな嘘吐くなよな!ったく……」
「悪かった。彼女に内緒で皆んなを持て成したいからと、相談されて」
佐助は、普通に招待しても、安土組と春日組が大人しく集まる訳がない。そう思い、エープリールフールを使って今回の計画した事を説明した。
「母上!皆んなが集まるの凄く楽しみにしておった!」
「おった!」
竹千代の言葉を真似て時姫は、ぴょんぴょん兎のように跳ねくるくると回る。
その愛くるしい姿に……
「そうか、そうか。おったかぁ〜」
相変わらずじじ馬鹿全開の信長は時姫頭を撫で、デレデレと鼻の下を伸ばす。
((これこそ嘘だ!!))
その姿を初めて見た赤鬼の変貌に、幸村と信玄は声さえ失い……暫くの間、背筋が違う意味で凍りつき凝視したまま固まった。何故かそんな信長は眼中に無く、時姫の方をじっと見つめる謙信。
(母親にそっくりではないか)
栗色の髪に、大きな瞳はまさにひまり譲り。
「???」
時姫はその視線に気づき、自分の手に握られた花冠を見る。それは、家康達が此処に到着する少し前にひまりが作ってくれたものだった。
時姫は、何を思ったのか謙信に近づき
「な、何だ?」
まるで屈めとゆうように、手をチョイチョイとさせ謙信は渋々膝を曲げると……
「あげりゅ♡」
ふわりと笑い、
花冠を謙信の頭に乗せた。
(な、なんだこの破壊的な愛らしさは///)
時姫は瞬殺で心を鷲掴し、ついに青の龍と呼ばれる男さえ虜に。
『「ぷっ……!」』
その姿に堪らず、肩を震わせる武将達。しかし一人だけその様子を、さぞ面白くない表情を浮かべる者が。
「言っとくが、時姫に先に花を付けて貰ったのは俺のが先だ。勘違いするでない」
「……順番など関係ない。今、花が付いているのは俺の方だ」
時姫のデレバトルのゴングが鳴った。