第165章 あなたにもう一度〜最終章〜後編
小さな男の子と女の子。
ーー『「嘘ついたら針千本の〜ます!ゆびきった!……」』
男の子は絡ませていた指を切らずに、ただじっと見つめる。女の子がどうしたのかと尋ねると、男の子は何故か顔を赤くして……
ーー約束の印。
女の子に口づけを贈った。
「今の………?」
私はパチッと目を開き、自分の唇を押さえる。
「まさか、夢の続きじゃ……?」
家康がそう呟くのを聞いて、私達は顔を見合わせ……目を丸くする。
『「えっ!!家康も(ひまりも)見たの!!??」』
そして同時に声を上げた。
ぼんやりとした記憶しかない夢。
でも今、はっきりと映し出された映像。
「………も、しかして、さっきの男の子と女の子って」
「………俺達とか?」
私達はしばらく間を開けた後、確かめるようにもう一度お互いの唇を合わせる。今度は何の映像も浮かび上がることなく……ただ柔らかい感触と熱いねつに気がつけば夢中になっていた。
そうしている間に、いつの間にか座り込んでいて……。
「父上!!竹千代も母上と口づけしたい!!」
「絶対、駄目」
「ちゅう♡ちたい」
「時姫〜〜…………っ!ちょっ!ひまり痛いって!!」
「時姫のファーストキス奪っちゃだめだよっ!」
黄色の花に囲まれた中、
笑い合いながら……
私は家族にある事を報告をした。
新しい命が秋頃、誕生することを。
「皆んなでお迎えしようね!」
それを聞いた後、竹千代と時姫は信長様達の元に向かって走り出す。
「あと、家康にはもう一つ報告……」
私は少し身を乗り出して、隣にいる家康の耳元に口を寄せる。
あなたにもう一度、伝えさせて下さい。
「私は何百年の時を使っても、伝えきれない程……貴方の事を……」
『愛しています』
〜あなたにもう一度〜(完)〜