第165章 あなたにもう一度〜最終章〜後編
振り返ったひまりは、可愛いとか綺麗とか……そんな有り触れた言葉じゃ、言い合せれないぐらい「美しい」姿だった。
「父上!」
「ち、ちうえ!」
早く!竹千代と時姫はそう言って小さな手を絡め、呆然と立ち尽くして居た俺を引っ張る。
「本当に来世に行かれたら大変だ」
「迎えに行って来い」
秀吉さんと光秀さんに肩を叩かれ。
「あの綺麗な花嫁は、お前のだからな」
「きっと、近くで見たらもっと素敵ですよ」
政宗さんと三成にそう急き立てられ。
「ふんっ!目を瞑ってる間に終わらせろ」
謙信は背を向け。
「冥土の土産に良いもの見させて貰った」
信玄は笑い。
「ったく。何回、見せつけたら気が済むんだ?」
幸村は両手を頭の後ろに回す。
「早く行け。俺が攫いに行く前に」
最後に信長様に背中を押された。
「ひまりさんが嘘を吐いたのは、一箇所だけです」
佐助君と子供達を連れ、未来に帰ります。
「俺とじゃなくて、貴方と子供達を連れて未来に帰ります……未来に行くと」
佐助の言葉に、俺は小さな二つの手を握り返す。
「……行こうか。困ったお姫様の所に」
二人の大きな返事を聞いて、三人で走り出す。
青々とした芝生。
近づくに連れ、黄色の花畑に変わる。
ドレスの長い裾の先を辿れば……
そこには……
「今日の嘘は……針千本飲まなくても許してくれる?」
少し不安そうな声を出して、それでも無邪気に笑うひまり。
「………絶対、許してあげない」
子供達の手をゆっくり離し。
俺はお姫様を捕まえた。