第165章 あなたにもう一度〜最終章〜後編
石碑に触れるとひんやり冷たくて。
(未来にどう繋がるんだろう)
最近、ずっとそんな事ばかり考えてた。薬指で光る翡翠の石を頬に当て、目を閉じる。
ほんと、今更。今更、徳川家康という偉大な人の重さを感じて、新しい命が私の中で、宿ると……つい、考えてしまう。
歴史は苦手でも、「徳川家康」が江戸幕府を築き上げた人物で……沢山子宝に恵まれた事ぐらいは知っていたから。
築姫様が正室だったかは解らないけど、本来の家康は側室も沢山居た筈。
もし、私がただの一人の女で格式も後ろ盾もなかったら……?
私の居ない……
違う未来が家康にはあった筈。
もう一人の「徳川家康」
私が居る……
新しい未来が家康から生まれる。
これからの「徳川家康」
どこかで、世界が二つに別れた?
それとも世界は一つのまま?
もしも、天女じゃなくて。
もし、織田家の姫でもなくて。
もう、未来の人間でもなくて……
何にもなくて
何処にも存在がなくて
それでも、家康は
私を選んでくれたのかな?
きっと考えても無駄な事をここ最近、考えてた。答えも、正解もない不確かな事を。
(だからね。今度は私が貰ってもいい?)
家康のこれからの全部。
未来と「徳川家康」の歴史を。