第161章 あなたにもう一度後日談(8)
その日の晩、仕事から戻った家康にひまりは早速、その話をした。
「……何言ってんの!そんな催しなんか出なくて良いし!!」
《ドンッ!》
着替えを済ましいつものように文机の前に腰掛けた家康は、その無謀な話に腹を立て思わず文机に拳を振り下ろした。
(何で、あんな見せびらかしするだけの下らない催しにひまりを!!)
この前、竹千代に武士としての大切な事を教えてくれた事を知り、少し見直していた所。にも関わらず、相変わらず無茶苦茶な事を言い出す信長にご立腹の様子。
「で、でも!信長様には沢山お世話になってるから、少しでも恩返ししたいし……」
ひまりはそう思い、弓術は家康から五年前に教わってから時々練習をしていた事を話し、少しなら自信があるからと必死に説明する。
「……舞踊は始めてからまだ、日が浅いよね?それに一体あの催しに、どれだけの人が集まるか解ってんの!?」
「………ようするに、私だと恥をかくから止めとけ、って言いたいの……?」
「誰もそんな事、言ってないだろ!」
「なら、どういう理由で駄目なのっ!?」
「理由なんて、どうでもいいし!!」
「なに、それ……もういい!家康のばかっ!」
「バカはひまりの方だろ!!」
(ひまりはただでさえ、危なっかしくて心配なのに)
(家康なら、応援してくれると思ったのに)
二人は双方のすれ違いから口論になり……ツーンと顔を背け、背中を向けあった。
(こ、これはまさに修羅場!!信長様vs家康公の始まりですねっ!!)
佐助は再び忍び込んだ屋根裏で、メモを書き留め事の成り行きをそこに収めることにした。