第82章 〜同じ気持ち〜姫主視点
祝言を挙げてから、
ひと月が経ったある日___
安土の皆んなと佐助君と幸が、久々に私の様子を見に城に来てくれると聞き、台所でおもてなしの準備を早めに始める。
(えっと、私と家康を入れると……全員で九人分かな?)
私は膨らんできたお腹に気をつけながら、お盆の上に湯飲みと茶菓子を乗せ湯を沸かす。
「あれ?……確かお茶の葉をこの辺にしまったはずなんだけど?」
葉が入った容れ物が見当たらなくて、爪先立ちをしながら棚の中を探していると、後ろで他の準備をしていた家康が、物凄い勢いで飛んできた。
「ちょ、何やって!転けたらどうすんの!」
家康は慌てた様子で、私の体を後ろから支える。
「えっと、お茶の葉を探してて……これぐらいで転けたりしないよ?」
「駄目。ひまりはただでさえ危なっかしいから……俺が探す」
お腹が膨らむのと同時に、家康はちょっと?
ううんか、な、り、心配性になってしまった。優しくしてくれるのも、大切にしてくれるのも凄く嬉しくて、毎日幸せだけど……
(本当は自分だって毎日仕事で疲れてるのに……)
ここまで大事にして貰うと、私の方が心配になってしまう。家康が我慢強い性格なのを知っているからこそ、余計に。
どうしたら、解って貰えるかな?
そんな事を考えている間に、皆んなの到着を女中さんが知らせに来てくれた。