第78章 約束の地へ〜おまけエピローグ3〜
俺は朝から城の離れにある書庫に篭り、産後の肥立ちに良さそうなきつけ薬の調合する為、それに合う薬草を調べていた。
(時期の事を考えると、この薬草なら近場にあるかもしれない……)
書籍をパタンッと音を立てながら閉じ、元の場所に戻すと近場の野原へと出向く。
芝生に足を踏み入れ、薬草が生えていそうな草むらに手を伸ばす。手当たり次第、薬草に使えそうな物を取り籠の中に入れ、お目当の薬草を探しながらひまりの事を考えていた。
ーーありがとう、ひまり。
出産後、虚ろな意識の中我が子だけはしっかりと胸に抱き、すすり泣き力なく笑う姿を見て……俺は赤子を受け取り言葉にした。
もっと気の利いた事が言えたら良かったが、時を超えて二人の間に生まれた命の温かさに、一番にそうひまりに伝えたくて……あれから一度もひまりには会えていない。
古いしきたりなど俺は如何でも良かったが、会うことで負担になることがあってはいけないと思い、代わりに俺は毎日文を届けた。
知らない間にこの時代の字を書けるようになっていたひまりは、時々返事をくれ身体の容態を俺に知らせ、必ず文面の最後に……
「早く会いたい」
と、綴って。
(……会いたい気持ちは俺も、一緒なんだけど)
一刻も早くひまりに触れたい。
俺は探していた薬草を見つけ、薬研で薬を調合するため部屋に戻ろうと、跳ねを返した。