第63章 約束の地へ 後日談(1)
そんな事を考えている間に、自宅の玄関まで辿り着く。するとバタバタと足音が鳴り響いた。
「ひまり様!!」
「ひまり様!!おかえりなさいませ!」
ひまりの姿を見た途端、夜遅くにも関わらず女中と家臣は玄関先に集まり、歓声を挙げる。
「こほっ!許しが出た。祝言はなるべく早く執り行う。明日から……ひまりを新居に迎える準備をしてくれ」
俺はあの時と同じようにひとつ咳払いしてそう言うと、より一層歓声が大きく上がった。隣の者と抱擁し合う家臣たち。手を叩いてぱぁっ!と、顔に明るさを表現する女中たち。喜びが前面に出ていた。
「ひまり様、この日をどんなに待ち望んでいたか解りません!」
「どうぞ、なんなりとお申し付け下さい」
「皆さん……」
ひまりは、滲んだ目元を拭う。
「また、廊下掃除頑張りますので、どうぞよろしくお願いします!!」
そしてあの時と同じような台詞を言って、深々と頭を下げた。廊下に笑い声が響く。
「…ぷっ!…っとに」
「ふふっ……!」
俺たちも顔を見合わせ同時に笑った。