• テキストサイズ

イケメン戦国〜天邪鬼な君へ〜

第50章 約束の地へ(5)




「家康さんっ!こんにちはっ!」


「…………あんた、しつこい」


またか、と思い俺は深いため息を吐く。下手にこれ以上関わりたくない。俺はその場から立ち去るためサッと立ち上がった。

すると、懐からあるものが滑り落ちる。

慌てて地面を見ると、そこには……



「これ耳飾り……?……わぁ、可愛いですねっ!」



「触るなっ!!」



触れられる前に俺は声を上げ、
自分の手で拾い上げる。



「……い、えやすさん?」



震える声が聞こえ、
ハッとして懐にそれを仕舞う。



「……これは、大切な物だから」



唯一これだけがひまりと繋がる確かなもの。




誰にも触れて欲しくない。




俺は驚いたように目を見開く女に、視線を向け低い声を出す。



「あんたが何でしつこく話しかけてくるのかは、知らないけど……」






俺にしたら、迷惑なだけだから。









女が走り去った後、もう一度懐から耳飾りを取り出し握りしめる。



ーーふふっ……いつも家康の懐から返ってくるね。



そう、言って嬉しそうに笑うひまりを思い出し、俺は視線を下に落とす。




「片方、ここにあるから……」




早く取りにおいで。



足元に咲いている黄色い花が、

代わりに返事をしたように揺れた。




/ 636ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp