第46章 約束の地へ(1)
ピッ、ピッ、ピッ……。
機械音が耳に届く。
瞼をゆっくり持ち上げると、白い天井が見えた。
(ここは……)
少しだけ首を横に動かす。
すると、すぐ近くで誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえて……白い制服を着た看護婦さんが、心配そうに私の顔を覗き込む。
「……何処か痛むとこありませんか?」
私はゆっくり首を振る。
(……ここ、病院だよね)
「あなた雨の中、意識を失っていて……緊急でここに運ばれてきたんですよ」
見た所、外傷はないようでしたが中々意識が戻らないから心配で……。看護婦さんは言葉通りの表情をして、私の手を取り脈を測った。
「何か覚えていますか?」
(確か私は……)
「……就職のお祝いに……一人で観光旅行に来ていて………」
(それから……それから……)
「……すいません、それ以外は何も……」
覚えていません。
そう、答えるのと同時に……
瞳から熱いものが流れる。
(あれ?何で私……泣いてるの?)
自分でもビックリして起き上がると……
シャランッ……。
片方の耳から、切ない音が聞こえた。