第41章 捕らわれた未来(14)
切り崩された檻から私は手を伸ばす。
やっと直接触れることが出来た胸。私はそこに飛びつき、そこから伝わる鼓動の音に「生きてる」って実感できて……そんなことしてる場合じゃないって、解ってるのに……早く逃げなきゃいけないのに。
もっと「生きてる」ことを
確かめたくて……
思わず自分から、家康の唇に唇を寄せていた。
「ひまり……っ」
倒れている謙信に小さく名前を呼ばれ、ハッと我にかえり慌てて唇を離すと視線を向ける。
「……掠っただけだから、傷は深くないと思う」
お腹から流れ出す血をみて青ざめる私。家康はそう言うと顎を掴みもう一度自分の方に向けた。
「…。それよりも。これがあいつにとって一番……死ぬことより酷いことかも、ね」
俺と一緒で。
(………え)
家康の言った意味はよくわからなかったけど、再び重なった唇の熱に気づいたら私の思考は奪われていた。
手と手を重ね、握り合い、抜け道を走り抜けると空に見えた綺麗な星。私は何日かぶりに外の空気を思いっきり吸い込んだ。
「馬を用意しました。追っ手が来る前に逃げて下さい」
「……後始末は、こっちがしとくからよっ!」
出口で待っていてくれた佐助君と幸に、家康は事情を話し用意して貰った馬に飛び乗った。
「ひまりさん、近々話したいことがあるから……また会いに行く」
「うんっ!待ってるね!佐助くんも幸も本当にありがとうっ!!」
私は二人にお礼を言って、家康の差し伸ばした手を掴み、胸の前に座る。
「少し飛ばすから、落ちないようにしっかり掴まってて」
家康の言葉に頷き、ピッタリとくっ付くように腕を回して胸にしがみ付くと、馬がすごい速さで駆け出す。
馬から落ちないように気をつけながら、家康の肩越しに見える二人の姿を見えなくなるまでの間ずっと、……見つめていた。
「……なんか、見ていて恥ずかしいくらい想いあってんだな、あの二人」
「……そうみたいだね」
「何だ、佐助?……浮かない顔しやがって……お前らしくねー」
「………………」
佐助は複雑な想いを寄せ、
(……俺の単なる思い過ごしだと良いけど)
近々ひまりに話さなければいけない事に気持ちが曇る。