第36章 捕らわれた未来(9)
(…………今、ひまりの声が)
「家康様っ!!」
俺が怠い身体を動かし、起き上がるのと同時に三成が駆け寄ってくる。
感覚が戻ったように手の震えも治り、頭も大分軽い。寒さも暑さも感じず、変な汗も引いていた。
「お加減の方は?」
「……大分良い」
「家康様の調合された薬は、やはり素晴らしいですね」
「……誰が薬を届けに?」
俺がそう言って、布団から起き上がろうとした時、三成の表情が一気に曇る。
「……信長様でございます」
少し間を開けた後三成はそう答え、まるで話を逸らすように……
「今、何か口にされるものでも準備いたしますので、しばらくお待ち下さい」
「……待て、一体何があった」
そそくさと天幕を出て行こうとする三成に違和感を感じ、俺は引き止める。
「…………」
自分の腕をギュッと掴み、黙り込む三成に何故か妙に胸騒ぎを覚え……
引いたはずの汗がまた、吹き出す。
「……ま、さか…、ひまりも…」
何故かそんな気がした俺は、ふと朦朧としていた意識の中で聞こえた、ひまりの声を思い出す。
俺の名前を何度も呼び、
誰かのぬくもりを感じた手……
「もう少し、ご体調が良くなられた頃にお話したかったのですが……」
上杉に、ひまりさんを攫われました。
全ての話を聞き終えた後、病み上がりなのも忘れ、俺は無我夢中で信長様の姿を探す。
(ひまりっ!!)
奴らの目的は最初からひまりで……
だから、俺を狙い……
この場に呼び寄せ、攫った……
「……っそ……あぁぁぁぁっっ!!」
俺の中で何かが壊れていく。
怒り、憎しみ、それ以上の
激しい感情が突き抜けた。