第36章 捕らわれた未来(9)
野営地から少し離れた場所。
そこに身体に良い薬草があると聞いて、私は信長様達が会議をしている間に、こっそり抜け出し一人で向かう。
(まだ、昼間で明るいし大丈夫だよね)
私は兵士の人達に教えて貰った野原に辿り着くと、草を掻き分け薬草を探し始める。
(明日になったら、ご飯も食べれるようになるかもしれない)
三成君が言ってた通り薬が効いて、家康の痙攣も治り呼吸も少しずつ良くなってきた。最初は不安で堪らず側につきっきりだったけど、明日には朦朧とした意識も大分回復してくると聞き、少しでも役に立ちたくて、今夜は炊き出しのお手伝いをさせて欲しいとお願いした。
(家康が戦に行っている間、政宗から料理を習っておいて正解だったかな?)
私はすっかり浮かれ気分で、時間も忘れて夢中で薬草を集める。
明日には家康と話せるかもしれない。
明日には家康が元気になるかもしれない。
明日には、明日には。
そんな期待に胸を膨らませる。
絶対、一人にならない約束をしたのに。
何があるか解らないって、ちゃんと聞かされていたのに。
家康のことで頭がいっぱいで。
明日のことで胸がいっぱいで。
何にも考えていなかった。
「……お前がひまり、だな」
「悪いが、一緒に来てもらう」
後ろから数人の黒装束の人達が現れ、護身用の刀を取り出す暇もなく、薬のようなものを嗅がされ……
私の意識はそこで途切れた。