第1章 プロローグ
洋子は会計を済ませると店を出て帰路についた。アパートの階段を駆け上がり自室のドアを開ける。
外は夕暮れで所々の家では明かりがつき始めていた。洋子はドアを閉めて鍵をかけると廊下の電気を付けた。
パチン!
誰もいなく洋子の1人暮らしの小さなアパートである。そして台所に入り電気をつけると冷蔵庫の中を確認して料理に取り掛かった。
「今日は何を作ろうかな?」
洋子は1人暮らしをするまで料理はやってこなかったため苦戦している。なので料理本は手放せないのである。
この日の洋子はご機嫌だったため鼻歌を歌っていた。
「あ~こんな時に素敵な彼がいたらいいのになぁ。」
と思う。
アパートに素敵な彼と一緒に住んで彼のために料理が振るまえたらどんなにいいことだろうか。しかし洋子にはそんな相手はいない。
「これから見つけていくしかないのかな?」
洋子は出来上がった料理を卓上に並べて食べ始めた。
「いただきます。」
洋子は料理を食べながらテレビを見ようと思いテレビをつけて料理を食べ始めた。
この頃のテレビ番組は非常に少なくNHKと日本テレビのみの放送であった。番組はニュース番組、プロレス中継、クイズ番組、ドラマも放送はしていたが数少ないモノであった。
この時代に洋子が夢中になって見て居たのが”二人のルメ子”と言うドラマであった。この時代にはカラーテレビなどなく白黒画面のテレビであった。
このドラマの出演者は長岡輝子さん、J・ボードワンさんなど名の知れた方々であり、話の内容は東京・大阪間マイクロ・ウェーブ中継回線新設にともない企画された東京・大阪二ヶ所からの二元生中継ドラマ。来日したバイオリン奏者が、娘からことずかった人形をルメ子に届けようとするドラマだった。
「放送時間に間に合ってよかった。」
洋子はテレビをつけて楽しみにしていたドラマが始まったのでほっと胸をなでおろした。この時代にはテレビ番組を録画するものはなくましてやパソコン、携帯電話などのSNSも普及していないためテレビ番組をオンエアで見逃してしまうことの方が多いからである。例えば洋子の場合は仕事で帰りが遅くなったというのが主な理由だ。
洋子はその他にもNHK美容体操の番組も欠かさず見て居る。美容とおしゃれに気を遣うようにしている。
「だって女の子だもん。」
洋子はいつもこの言葉を口にしていた。
