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【イケメン戦国】時をかける妄想~

第12章 二人の宝物 三章


「遅えなー。料理が冷めちまう。」

「‥そうだね。」

そろそろ日も傾き始めた頃、
宴の準備も整い、あとは徳姫の
帰りを待つばかり。

「もう帰ってきてもいい頃なんだが。」
城門前まで出て来て待っている
凛の隣で秀吉も心配そうに
通りの方を見つめている。

(やっぱり探しに行った方が‥)

小さな娘にはまだ早かったのかも知れない。
もし、怖い思いをしていたら、と
不安ばかりが胸を過ぎる。


その時―――

「母上ー!」

聞きなれたその声に凛が
ハッと顔を上げる。

「徳!!」

背中に反物をちゃんと背負い、
その腕には大事そうに花を抱えている。

「母上っ!ただいまもどりました!」

「お帰りっ!」

零れそうになる涙を堪えて、
凛は徳姫を抱きしめた。

「よく頑張ったね!凄いね!」

「えへへ。」
もうおねえさんになるもん、と
誇らしげに微笑む徳姫は
少しだけ大きく見えた。

「よく戻ったな。お帰り。」
よしよしと徳姫の頭を撫でてから
御館様に報告してくる、と秀吉は
城内に戻っていった。


「どうしてそんなに汚れてるんだ?」

転けたのか、と徳姫の頭に
ポンポンと手を置いて政宗が
不思議そうに尋ねる。

「あ、えっと、それは‥。」

言い淀む徳姫が後ろに視線を送ると、
盛大にため息を吐く家康の姿。

そして、

「謙信様?!佐助くん!」

「やあ、凛さん。」
徳さんからお誘いを頂いたんだ、と
なぜか瞳を潤ませる佐助。

「そうなんだ!」
謙信様も、お久しぶりです、と
凛がふわりと微笑む。

「ああ。変わりないか?」
凛の髪を一房掬い上げ、唇を寄せた。

「‥ちょっと。」
ここが安土城ってわかってんの?と
横から謙信を払いのける家康。

「成り行きは俺が話す。」
ほら、行くよと凛の手を引いて
ズンズンと城の中に入っていった。


「相変わらずモテモテだな。」

「モテモテ?」
徳姫は不思議そうに佐助を見上げる。

「徳の誘いならいいだろ。飯なら山程ある。」
味は保証するぜ、と政宗がニヤリと笑うと
謙信がフンと鼻を鳴らした。

「酒はあるんだろうな。」

政宗と謙信が連れ立って歩く後ろを
佐助と徳姫が並んで歩く。

「ごはん、楽しみだね!」

「そうだね。」

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