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【イケメン戦国】時をかける妄想~

第11章 二人の宝物 二章


「重家様ー!重成様ー!」

日も登りきった秋の空。
佐和山城に女中の声が響く。


「どうしたんですか?」

息子達を探す声を聞きつけて
凛がヒョコっと顔を出した。

「凛様っ!それが‥」

息子達の世話係である女中の
話によると、昨晩二人は
夕餉も食べず書簡を読んでいて
今朝見ると、手付かずで
置いてあったそうだ。


「‥なので、せめて朝餉だけでもと‥。」

困ったように眉を寄せる女中に
凛はふわりと微笑んで見せた。

「じゃあ、私が呼んできますね。」
朝餉は部屋にお願いします、と
女中にお願いすると凛は
城の書庫に向かった。


読書好きの三成らしく
この佐和山城の書庫は広く、
御伽草子から戦術書に至る迄、
幅広い種類の本や書簡が
たくさん貯蔵されている。

祝言を上げて早数十年、
産まれた子供達も成長し
父親に劣らずの本好きになった。

長男の重家は十三の年を迎え、
近い内に初陣が決まっていて

もうすぐ十になる次男の重成は
父親である三成について回り
政に興味を持ち始めた。



「重家、重成ー、いるの?」

物音一つしない書庫の前で声を掛け
静かに襖を開く。

ふわりと本の香りがして
目の前に道も無いほど積み上げられた
本や書簡の山が現れる。


「‥いるね。」

先日、女中さん達と片付けた書庫が
こんなにも荒れているという事は、

(絶対いる、どこかに‥!)
と、一番近くの本の山を退かしながら
一歩ずつ奥に進んでいく。

いくつかの山を越えて
ふと床に目をやると着物の端が
本の隙間から覗いている。


(まず一人‥!)

近くの本が崩れないように
慎重に掻き分けていくと
ようやく手が見えた。

「重成!起きなさい!」
その手をペシペシと叩くと
指が微かに反応し、
モゾモゾと本の山が揺れる。

「‥あっ。」

凛が声を上げるのと同時に
本の山が一つ崩れ落ちた。

そんな事は気にする様子も無く
ムクっと起き上がり、
三成によく似た藤色の瞳が
ニッコリと凛を捉えた。


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