第2章 こんにちは
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重いまぶたを開けるとキャスケット帽子が得意気に私の顔を覗き込んでいて、「俺キミのこと知ってるよ!すごくね!?ねぇすごくね!!?」って言うんだからマジこいつもう不審者極まりない。
交通事故で死んだはずの私が何故か生きていて、何故か目が覚めたら大人気漫画のONE PIECEの世界に来ていて、これまた何故か、この世界の人たちは私を知ってるというのだ。
「意味が分からない」
キャスケット帽子を深々とかぶった男の話によれば、この世界では私の同級生が主人公として話が展開してゆく物語があるそうな。こんなの一体どう受け止めろと言うんだろう、私からしたら目の前にいるこのこの男の方が、漫画に出てくるキャラクターだというのに。
ともあれ、仮にこれが夢ではないとすれば━━これは先程キャスケット帽子の顔を殴った事で確認済みだ。「痛い!夢じゃない!」って喜んでたからきっと夢じゃない━━私は家なき子なわけだ。流石に『偉大なる航路』でホームレスになれるほど私のサバイバル能力は高くないのだが、しかし、ハートの海賊団に入らないかというキャスケット帽子の勧誘にも頷きかねていた。むしろ出来るなら全力で拒否したい。だって船長あれだよクマ男。あ、間違えた。目の下の隈に囚われすぎた。トラ男。
ホームレスはもちろん嫌だけど、シャンブルズはもっと嫌だに一票でお願いします。出来れば五体満足、正常な位置にあってほしいし、さらに欲を言えば麦わらの一味とか白ひげとかシャンクスとかそういう毎日が楽しげな船に乗りたい。間違っても手に「DEATH」とか刺青いれてる船長の船には乗りたくない。完璧頭イってるじゃん?死の外科医なんて通り名痛すぎて私の視界に入ってきた日には大怪我しちゃうよ!とっても痛いよ!!!!
「というわけで遠り「シャチ、なにしてるんだ」あ゛あ゛あぁああああ゛ああ!!!!!!!!」
【こんにちは、キャスケット帽子】
そして、隈がチャームポイントのトラ男くん