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名の無い関係

第19章 絶妙な関係


調査兵団兵舎、大浴場女湯。
もうすぐ消灯時間だが、ユラユラ湯気の立つ浴槽にはまだ人影が二つ。


「あははは!隙だらけなんだよ、アゲハは!」

『そうかな?』

「そうだよ、だって私にだって出来るよ。」


バシャっと水飛沫を立てて急に体を寄せてきたハンジに、アゲハはキョトンとした顔をした。
ほらね、と唇が触れ合うのではないかと思う程に近い所でハンジが笑う。
確かに今は油断していた。暖かいお湯に入り身も心も解れていた。
それにハンジは友達。しかも同性。
仮にこのままキスをされたとしても、それはちょっと変わったスキンシップだ。
嫌がる理由も避ける理由もないのだから、今の状態が隙だらけの証明にはならないような気もする。


「全く、ほ〜んとアゲハって賢いくせにどっか抜けてるよね。」

『どうせバカですよ。』

「バカって言うかさ。なんて言うのかな。」


腕組みをして真剣に考え始めたハンジに、アゲハは小さく溜息をついた。
そんなに考え込まなければならない程の事だろうか。
確かに自分はハンジの様な知識はない。
そうわかっているのに勉強や研究をするなんて苦手だ、むしろ、嫌いだ。


「わかった!アゲハはさ、自分の価値を低く見過ぎなんだよ。」

『価値?』

「そう!だって私が男だったらアゲハを好きになるだろうし、抱きたいよ!」


なんなら今のままでも抱けるかも、と本気なのか冗談なのかイマイチわかりにくいハイテンションで言ったハンジに、丁重にお断りを告げる。
あははは〜フラれた〜と、ケロっと笑い飛ばしたハンジ。


「兎に角、アゲハは女としても魅力的なんだよ。」

『魅力的ねぇ…。』


その言葉が自分には一番縁の無いもので、褒められているのだろうが、全く実感が持てない。


「リヴァイは間違いなく、女としてアゲハを好きなんだよ。」

『そうかなぁ。』

「そうだよ!じゃなきゃあの潔癖症が自分から誰かにキスするわけないじゃん!」


少なくとも自分から触れたい、キスしたいと思ってしまうぐらいには好かれてるんだよ!と何故か嬉しそうにハンジは言った。
極たまに、こうして他の兵達が居ない時間を狙って大浴場に来ては所謂ガールズトークに花を咲かせる。
ハンジとアゲハが出逢ってから今もこの習慣は変わらない。
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