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名の無い関係

第1章 上官


街からは平和な声が、空からはときおり小鳥の声が聞こえてくる。
足元をグルリと見渡し大きな欠伸をした彼女はそのまま壁上に寝転がった。
確か今日は先日の壁外調査の報告会議があるが自分は不参加だった調査だ、ワザワザ仲間の誰が死んだという報告を聞きに行く様な趣味はない。
帰ってきて居ない、その事実だけで十分だ。
どんどん兵が殉職していく調査兵団だからこそ、生き残れている自分はいつの間にか分隊長に昇格した。
同期の連中や少ない先輩方、やる気に満ち溢れる後輩達のように自分は死ぬ程訓練に励む事は嫌いだ。
エルヴィンやハンジの様に頭に知識を蓄えるもの苦手だ。
だから特別、出世したいとも思わないし、会議に出席せず降格されても別に構わない。
長くて重く辛い話が続くだけの会議に出るぐらいなら、こうして昼寝をしていたい。


「…あんたがアゲハか?」


伏せていても影が重なった事には気が付いていたが、自分から確かめる気にはならなかった。


『そうだよー、一応。』

「エルヴィンが呼んでる。」

『あー、パス。』

「は?」


起き上がる気がない事を伝えるために手をヒラヒラとさせた。
どうせまた面倒くさい事を頼むに決まっている。
今回の壁外調査から自分が外されたのも彼の策略のせい。
いくら調査兵団の今後のかかった極秘事案だったとしても、壁内でスパイの様な事をするために自分は兵士になったわけではない。
まして自分の任されている分隊は特別作戦班。
あ、だからか…と、現状のスパイ活動に自分で納得してしまった。


『君だれ?』


片目だけを開けてこちらを苛立った顔で見下ろしている青年を見た。


「…リヴァイだ。あんたがいい子にしてりゃ部下でいてやる。」

『っ!アハハハっ!』

「何が可笑しい?」

『いや、ゴメンゴメン。』


エルヴィンが直々に王都の地下街から見つけて来た元ゴロツキ。
そして今回の事案に巻き込まれ仲間を失ったばかりの一応新兵。
強い、強いとハンジが興奮して話してくれたし、エルヴィンからもいずれは、と聞いていた。


『よろしくリヴァイ。たぶん年は私の方が下だろうし、無理して敬語とかは使わなくてもいいよって君、使ってなかったか。』


そう言うとまた笑いがこみ上げてしまった。
なんなんだ、コイツ…とリヴァイの目が言っている。
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