第4章 距離II
彼女から頼みがあると言われた時には何事かと焦りに近いものを感じた。
次の壁外調査についての会議中も何かを真剣に考えていた様だった。
普段は隙だらけでだらし無く、まるでダメな兵だがそれは彼女なりの気遣い。
団長や自分、他の分隊長達が部下に厳しくするのは無駄に死なせない為だ。彼女はそれもちゃんと理解している。
けれど自分は自分のやり方で部下を、仲間を死なせないと必死に考え厳しさだけではなく、それを装っている。
初めて彼女と話した頃と今も変わらない。
彼女は入団式で堂々とキース団長に敬礼拒否をした。
『私の心臓は私のものです!だから今はこれを捧げると誓えない!』
まだまだ少女と言うべき歳の彼女が、そうはっきり言い放ったのは衝撃的だった。
勿論、その後罰を与えられていた。
だが、その時の彼女の反発や反抗ではない何かを秘めた強い瞳に惹かれた。
「…リヴァイに個人訓練?」
『そう。彼は確かに強いけどまだまだ巨人との戦闘方法に関しては素人。』
「それを言うなら新兵はみなそうだろう?」
なぜリヴァイだけに拘る。
会議中のあれもリヴァイの事を考えていての事なのだろうか。
『彼は巨人戦闘の基本を分かってない。』
彼女の率いる第三分隊の生存率は彼女が隊長になってから確実に上がり、怪我を負う者はいても殉職する兵は出ていない。
普段の訓練の様子を見ていても何も特別な事をしているわけでもない。
なら、他の分隊と何が違うのかと気にはなっていた。
「それはリヴァイだけに教えるべきことなのか?」
『リヴァイだから、だよ。他の人には教えても実行は出来ない。』
出来ない事をやらせるのは死なせるだけだよ、と彼女は言った。
「それが君の戦法か。」
『そう、単純でしょ。そして簡単。』
出来ない事をやらせない。
だからリヴァイにはもっとやって貰いたい事があると彼女は言った。
「あまり目立つやり方はするな。通常の訓練に支障がないように、な。」
『了解しました!』
まるで自分のワガママを叶えた子供のような顔だった。
やはり彼女にリヴァイを任せたのは間違いでは無かった。
いつか、二人が調査兵団の中心となって人類を救う事になるだろうとエルヴィンは小さく微笑んだ。