第5章 結
「隣、座っても良いですか」
目の前で繰り広げられた茶番劇のせいもあってか、声を掛けられるまで清光はすぐ側に近付いていた小夜左文字に気付けなかった。
「いいけど。小夜が俺のとこ来るなんて珍しいね」
小夜は遠慮がちに少し距離を開けて座ると、短い沈黙の後抑揚の少ない声で問うた。
「装置の故障は、加州さんがやったんですよね」
「えっ、」
想定外の問い掛けに清光は固まる。
気を抜くと引き攣りそうになる口元を無理矢理笑顔に変えて、平然を装う。
「誰から聞いたの、それ?」
「僕の勝手な予想ですが、違いましたか」
鶴丸以外にそんな下らない噂を流す奴がいたのかと思ったが、事実はそれ以上に厄介だった。
「もし本当だとしたら、小夜はどうするの?……誰かに言い付けるの?」
小夜は静かに首を横に振る。
「お礼を……言いにきました」