第13章 酸欠ワールド
「さってと。じゃ、そろそろ帰りますか!」
「ん」
「楽しかったね~」
「うん…」
…うん。ホントに楽しかった。いろいろあったけど、こんな短い時間に。でも…やっぱり楽しかったな。帰りたくないくらい。帰したくないくらい…。
「…ね。ホントに言うつもりないの?」
「…うん」
「ま、相手は国民的アイドルだし?ライバルはいっぱいいると思うけど…。でもさ、言っていけないほどの関係じゃないじゃん、芹奈は。仲いいんだし」
「…」
むしろ相当に射程圏内だと思うんだよね。つーか、俺が告ってる時点で、そういうことでしょ?つまり。全然アリなんだよ。
「それでも、伝えないの?」
「うん」
「…」
そこは言い切るんだよなぁ…。
「じゃ、言わないにしても、ほら。もっとゴハンとか、誘ってみたら?」
「無理だよ!」
「そんなことねーって!そうやってちょっとでも距離縮めればいいじゃん。ね?二人飲みとか。俺ともしたんだし、別にさ。変じゃないでしょ」
「変だよ」
「何でよ」
「ていうか、絶対気付かれるよ。二人っきりだなんて…。無理!バレちゃう!!」
「そう?フツーにしてたらバレないって。俺、マジでビックリしたもん。全然さ、そういうそぶり見せないじゃん、芹奈」
「だって!二人っきりじゃないから!」
まあ、それはそーだけど。二人で喋ってたことだってあるでしょ~よ。
「なんか、ちょっとした変化とかも敏感に察知しそうだし…。絶対気付かれる!そういうの、スゴイ鋭そうだもん!!」
「…そっかぁ~…?」
そういうの、むしろスゲー鈍い気がすんだけど…。案外ね、カレ鈍いとこあるよ?少なくとも俺はそう思うけど。
てかさ。いいじゃんねぇ?バレたって。たとえその気がなくても、『あれ、コイツ俺のこと好きなのかも…』って思ったら、ちょっとソワソワしたりするよ?けっこ~悪い気はしないもんなんですよ、男って。ええ。単純なんでね?