第1章 マジカルハンド
「はっ…うっ…くっ」
「…」
「ひっ…っく…」
「…あ~…もうダメだコレ。いよいよ買い取りだコレ。あ~も~…!」
ホントごめん。…でも俺、知ってんだよ?おまえがさ、俺にちょー甘いの。
「ひっ…ひくっ…あ…うぅ~…っ」
「…あ~あ。ったく。しょうがねえな…」
「ううっ…ニノ…っ」
「…ハァ。もいいよ、いい。でも俺、高いよ?言っとくけど」
「…んっ…うっ…んっ…うんっ…」
ほら。そうやってさ、ため息ついてるくせに、俺を和ませるようなこと言って。『いいよいいよ。もう泣けよホラ』って。『全部出しちゃいなさい』って。ポンポンってリズミカルに俺の背中を打つてのひらは、俺への深~い愛情の裏返しでしょ?
いや、表か??
…ま、どっちでもいっか。裏も表もないしね。俺にとってのニノちゃんは。ついでにタネも仕掛けもないのにさ、スゴイ手品ができるんだよ。
俺の奥底にある、俺自身気付いてないような傷まで、知らない間に治してくれる。
そういうマジックの使い手なの。ニノって。