第5章 灯台内も暗し!?
「ね、ダレ!?芹奈」
「…」
「ねえって。誰?も、正解教えて!!」
「…正解って」
「や、コッチの話。んでっ?誰なの、本星はっ!!」
あ、違った。本命だ。あ~も~!どっちでもいいからっ!そんなじらさないでっ!!
でも、やっぱ芹奈は何か渋ってて。なかなか言ってくれないから、俺はまた一生懸命いろんな人の顔を思い出してた。真剣に考え始めてた。
でも、何でだろうね。そこは完っ全に油断してた。不思議なくらいに、何でかそこはまったく思い浮かばなかったんだよね。本当なら、一番先に気づかなきゃいけなかったのに。
「えっと…」
「うんうんっ」
「…」
はいはい。また待機ね?ええ、ええ。もう全然いいっすよ、俺は。もういっくらでも待ちますよ、こうなったら。『わたっし待~つ~わっ♪』って、名曲が頭の中でしばらく流れてたわ。グラスを揺らしながら、フンフン頭も軽く揺れてたよ。そんな俺の耳に、芹奈の小さな小さな声が、ボソッと入ってきた。
「………くん…」
「…」
「…」
「えっ」
「…」
「え?…ちょっと待って。えっ?ごめん、もっかいいい?」
思わず聞き返してしまった、一瞬スルーしたその名前。あ、声がちっちゃかったからとかじゃなくて。ちゃんと聴こえてた。耳、すげー澄ましてたから。実は。
でも。だって。いやいや。まさか。
そんな、まさか―…