第5章 灯台内も暗し!?
「ね。ぶっちゃけさ。マジで。…誰?」
あ。さすがに沈黙。そらそうか。でも、ここまで聞いたからには教えて欲しい。そしてガツンと俺をやっちゃって欲しい。
『あ~…。なら俺、無理だわ。敵わねえわ』って。『俺なんて足元にも及ばないね、はいスイマセンっした!』って。そう思わせて欲しい。
「…」
「…」
それ以上は無理に問い詰めたりしなかった。ただ黙って、俺はお酒を煽った。
「すいませ~ん。同じのください」
「…」
別にそんな無茶な飲み方してたつもりはないんだけど、荒れてるように見えたのかな。『大丈夫?』とか。芹奈、気ぃ遣ってくれて。ぶっちゃけ大丈夫じゃないけど、今はまだ大丈夫。芹奈の前だし。つーか、俺がこんなになってる原因はアナタですからね?
…や、俺のせいか。俺自身の問題でした。スイマセン。やっぱ大丈夫じゃねぇな。なんか、ちょっといじけモード入っちゃってるかも…。
「…よっぽどさぁ、イイ男なんだろうね?きっと。なんせ芹奈がホレちゃうくらいだしさぁ…」
「…」
ほら。こんな皮肉みたいなこと言うつもりないのに。素直にもっかい『誰?』って聞けないから、こんなくだらないこと言っちゃう…。
あ~もうっ!ダメだっ!ダメダメだ!だからフラれんだよ。そらフラれるよ、こんな情けない男。フラれて当然だわ!
グッとまた一気にグラスを空けた。
「はぁ~…。ウマイッ!マスター!もーいっぱいおかわりっ!」
「相葉くん、飲みすぎだよ…」
「大丈夫だってぇ。そんな飲んでないっしょ」
「…」
ホントに、量はそこまで飲んでない。でもちょっとペースは速いかもね。そんな俺を見かねたのか、ついに芹奈が言った。