第5章 はじめてのおつかい
「こ、こんな事で許されるとは思ってないですけど、買い物袋持ちます!」
「えっ、ううんいいよ、大丈夫。これすごく重いし……」
「なら尚更持たせてください!」
わ、そんなにまっすぐに見ないで、なんだかキラキラが見える。これが今をときめくアイドルのセンターか……勝てない。
「じゃあ4袋あるから……2袋お願いします」
「はい!」
それでも割と重いものの、とても楽になった。
高校生でもスマートな方だな、なんて思ってたのにやはり男の子は男の子。力は私よりあるようで、私が今もふうふう言いながら運んでいる荷物と同じ量を話をしながら余裕の表情で持っていてくれた。
会話の中で簡単に自己紹介し、これから働かせてもらう事になったのを伝えると、どうやらナギくんからハイテンションなラビチャが届いていたようで既に全員が知っているらしい。
「それで、環のやつが〝コーヒーの人来るのか!〟なんて言ってたんですよ!」
「あはは、確かに四葉さんの第一印象はコーヒーだもんね! 後、私にも気楽に接していいよ、寮のお手伝いさんって言うかお母さんみたいな感覚だと思ってくれて大丈夫」
コーヒーの人と言う呼ばれ方でちょっとツボに入った。四葉さんは面白いな、逢坂さんは苦労してそうだけど。
「お母さんかぁ……歳が近そうだからあんまりそんな感じしないけど、じゃあ御崎さんって呼ぶよ!」
「近い……かな、私大和さんと同い年なのよね」
「えっ!?」
おっと、ここでも年齢感覚に問題発生。紡ちゃんと同じ位に見られていたようだ。
「あの、えっ、ごめんなさい……」
「へ?いやいや、謝らなくていいよ、大和さんにも年下に見られてたし、お前は年齢よく分からないって言われること多いの。だから気にしないで気楽に接して?」
「はい……あっ、うん」
しどろもどろな陸くんを横目に、帰路は残り半分位になる。
「あとちょっとだよ、頑張ろ!」
「うん……それにしてもこれすごい重いよ御崎さん……よく女性1人で途中まで持ってこれたね……」
なんでもない顔はしてるけど重いには重いらしい。
「ふふ、結構筋力はある方なのよ」
笑顔を作って強がってみた。でも、私の指はそろそろ千切れそうだよとSOSを出し始めている。
買いすぎた。あの時の疑問形は確定事項となった。