第4章 挨拶回りと初仕事
なんて口をポカンと開けていたが、数秒もしないうちに口を閉じて悲鳴にならない悲鳴をあげることになる。
カタコトの王子様が、手の甲に落としたキスのせいだった。
いやいやいや、普通こんな事ありえないでしょ、と思ったけど外国では普通なの!?いや普通はほっぺとかが挨拶じゃない!?いやでもほっぺにされたらされたでそれはビビるけど!!
思ってるんだか口にしてるんだか、もはや自分でもわからないくらいにテンパっていた。
いや、男性とお付き合いした事はあるけど、こんな美形周りにいなかったし、こんな眩しくて目を瞑ってしまいそうな絵面に自分がいることがもうびっくりで、何より流石にここまでの美形に手の甲にキスされればそれはまぁ女性なら恋愛感情の有無は抜きにして大概ドキドキはしてしまうもので。
「ばっ……万理さん……ナギさんはいつも……?」
「くくくっ……ええ、そうですよ」
私の反応がよほど面白かったのか、肩を震わせて笑う万理さん。
こうなる事を分かっていて私に何も言ってくれなかったのか……すごく優しい人だと思ってたけどちょっと意地悪だ。
「御崎……」
「はい、なんでしょうナギさん」
一呼吸して落ち着いてから、ナギさんに改めて向き合う。
「ワタシの事はさん付けじゃなくていいデス、もっと仲良くなりまショウ!」
それでいいものなのかと万理さんを盗み見るも、特に何も咎める様子もないので、じゃあナギくん、と訂正してあげると、心底嬉しそうにルンルンしながら、お仕事の準備をしに行ってしまった(最後まで御崎マイプリンセスなんて言ってたのは聞かなかったことにした)
「朝っぱらからナギはうるさいな……今日は特別騒がしい……ん?あれ」
ナギくんの声で起こされたのか、ややムスッとしながら可愛らしい見た目の男の子が入ってきて、はた、と私と目があった。
「初めまして、瑠璃華御崎です!今日からこちらで家事、サポートを中心にお手伝いさせて頂くことになりました。和泉三月さんですね?よろしくお願いします!」
「初めまして、あの、御崎さん俺より年上?ですよね?」
「ええと……確か三月さんは21歳でしたよね?私は22歳なんで、一つ上かと思います」
あぁ、そういえば年齢不詳ってよく言われる。