第10章 歓迎パーティの波乱
「大和くんってさ」
「ん?」
「面倒くさがり風にしてるけど、結構面倒見良いよね」
「はは、冗談!俺の嫌いなものは」
「面倒なこと、でしょ。知ってるよ、プロフィール読んで勉強したもの」
私の言葉にポリポリと頬をかくと、おう、そうか、と呟く。
「こうやって送ってってくれる方が面倒だろうし、それにパパラッチされたらもっと面倒じゃない?」
「……あー、いや、お前さんは俺のマネージャーだし?問題は無いでしょ」
「いやいや、アイドルがマネージャーを徒歩で送るなんて普通じゃないから。大和くんが意地悪なようで優しいのは分かったけど、誤解されないか私が不安だよ」
「……」
「大和くん?」
「あ……いや……御崎、もうマネージャーらしい雰囲気出してんのな。流石社長のお眼鏡に適ったキャリアウーマン」
ハハッ、と笑いながら人差し指で眼鏡を上げる大和くん。すぐに私をからかうと言うか茶化すと言うか……壁は感じなくなったけど、何を考えているのかはさっぱりだ。
「よく分かんないけど、私に気を遣わなくて良いからね、ホント。私の事よりも大和くんと皆の事を大事にしようよ」
「……そんな言い方はないんじゃないんですかね」
「いや、でも」
「マネージャーが何か事件に巻き込まれたりするのもなかなかスキャンダラスだろ」
なるほど言われてみれば確かに。と思いつつも、大和くんが出歩く事で大和くん自身が事件に巻き込まれる可能性だって出てくるだろうに……そう考えては見たものの、そうなるとどこへも出歩けなくなるか。
「ん……色々腑に落ちないけど……気遣ってくれてありがとうね」
「お前さん、結構頭硬いと言うか、融通効かないタイプって言われるだろ」
「よく言われるけど、なんで?」
「言動からそう思っただけ」
「……やっぱり私頑固なのかしら」
はぁ、とこれみよがしにため息をついてみたけど、大和くんはそれを見て笑う。
「ま、いい所でもあるんじゃないの?論理的に物事を見るのは大事だし。じゃあそんな御崎が納得出来るよーに説明するとだな、俺はこれ位の距離歩いたところで面倒じゃないし、マネージャーをお節介やきのリーダーが送っただけだから問題ありません」
「はいはい、ありがとうございます」
お互いくすくすと笑うと、なんとも平和な時間が流れた。