
第5章 加州清光の話 【五振り目】

ねえ。
主がさ、怖い話を集めてるって聞いたんだけど…。
俺の話も聞いてもらってもいいかな?
本当?やった。
ここは閉めとくね。
俺と主の二人きりで話したいんだ。
良いよね。
俺ね、この前の遠征の時任務が少し早く終わったから、みんなと離れて一人でブラついてたんだ。
特に理由はないかな。
今思うとなんでみんなから離れたのか分からないけど…。
えっと…あの日の任務はお上から依頼された要人の護衛だったかな。
俺達は歴史修正主義者が襲って来ないように見張り役を頼まれていたんだ。
忘れちゃった?
結局歴史修正主義者は現れず、要人は無事目的地に到着。
俺達は用心して辺りの散策っていう体の、自由行動。
要人は京都に用があったみたいでさ。
主とよく行く万屋とは違った、お洒落なお店が多くて。
主にお土産でもあったらいいなーって思ってたのに…。
俺はよく分からないまま町中を歩いてたんだ。
俺達が自由行動になったのは昼過ぎで、全然明るい時間だったのに俺が足を向ける先は薄暗かった。
長屋の間をスルスル進む自分の足が怖かった…。
まるで知っている道を歩いているように。
どこか目的地があるみたいに。
俺が足を止めたのは祠の前だった。
賑やかな町並みから離れた、寂れたような場所。
建てられている長屋はおんぼろで、住んでいる人たちはみんな顔が死んでた…。
あれだけ華やかな街なのに、奥へ行けば人の負が掃き溜めにされたような所で。
その祠は祠って言っていいのか分からないくらいボロボロ。
屋根も壁も崩れていて、中にあったお地蔵様も地面に転がってる状態。
お花もお水も供えられてない忘れられた祠。
俺、ゾッとした。
ほら、俺達も元は物だし。
人間に管理維持してもらわないもこうなるのかって。
俺も主がちゃんと手入れしてくれないと、この祠みたいにボロボロになるのかって思ったらすごく怖くて。
でも、それと一緒にこの祠がすごく可哀想だった。
祠自体の造りはとてもよく出来ていたと思う。
うーん…。
ボロボロだったけど、結構前に建てた人の想いが微かに残っていてね。
何か大切なモノの為に建てられた祠なんだろうなって。
物同士なんとなく分かるんだ。
だから俺、せめてもって思って転がっていたお地蔵様を祠の傍に立たせたんだ。
本当に出来心というか、同情…なのかな。
同じ物なのに同情とか変な感じだけどさ。
