第2章 忘れ物【碓氷真澄】
『いってらっしゃい』
と高校生たちに言う前に戻りたい。
カレーに気を取られていた自分を
今回ばかりは殴ってやりたい。
(届けなきゃ・・・)
至「あれ、監督さん?
難しい顔してどうしたの」
『ああ、至さん』
出勤前の至さんが大儀そうに
でも気にしてくれている様子で
声をかけてきた。
『実は、真澄くんが
カバンを置いて行っちゃったみたいで』
カレーにキリがついて
軽く床を掃除でもするかと
クイック●ワイパーを
手に取ったところで
ソファーのクッションに紛れて
置き去りにされたカバンを
見つけてしまったのだった。
至「真澄は寝ぼけすぎだな」
『わかってはいたんですけど・・・』
至「監督さんのせいじゃないよ。
会社行くついでに届けようか?」
『でも、ちょっとは責任あると思うので、
私、届けには行きます。あ、でも・・・』